The 4-Way Test
言行はこれに照らしてから
Of the things we think,say or do
01
真実か どうか
Is it the TRUTH?
02
みんなに公平か
Is it FAIR to all concerned?
03
好意と友情を深めるか
Will it build GOODEILL and BETTER FRIENDSHIPS?
04
みんなのためになるか どうか
Will it be BENEFICIAL to all concerned?
この四つのテストの創案者であるハーバート J.テーラー(ハーブ)は、やり手で卓越したセールスマンであり、人の上に立つ人物でした。ハーブは行動家で、信仰心が厚く、道義を重んじる人物でした。
1893年に米国ミシガン州に生まれたハーブは、イリノイ州エバンストンのノースウエスタン大学を苦学の末、卒業しました。卒業後、彼は、YMCAおよび英国陸軍福祉機関の任務で渡仏し、第1次世界大戦では米国海軍の補給部隊員として従軍しました。
1919年にグロリア・フォーブリックさんと結婚して、米国オクラホマ州に新居を構えたハーブは、同地でシンクレア石油会社に勤務しました。彼は1年後に同社を退社し、保険・不動産・石油リース仲介業を始めました。 数年に及ぶこの事業でいささかの成功を収めたハーブは、1925年にイリノイ州に戻り、シカゴのジュエル・ティー社に入社、とんとん拍子に昇進しました。そしてやがてシカゴロータリークラブの会員となりました。
1932年、ジュエル・ティー社の次期社長候補であったハーブは、破産寸前状態にあったシカゴのクラブ・アルミニウム社の再建を依頼されました。調理器具メーカーの同社は、総資産額を40万ドル上回る負債を抱え、倒産の瀬戸際にありましたが、ハーブはこの難事業を引き受け、危機にひん瀕した同社に自らの運命を託したのです。彼は、ジュエル社を辞め、これまでの給与の8割減という収入でクラブ・アルミニウム社の社長に就任しました。しかもそのうえ、運営資金に充てるため、自己資金6,100ドルを同社に投資したのです。
信仰心の厚いハーブは、同社を建て直し、大恐慌下の沈滞ムードを払拭(ふっしょく)するための手段として、社員たちに倫理的価値観の目安となる簡潔な指針を提供すべく、神の啓示を求めて祈りをささげました。 社の倫理訓について構想をめぐらせたハーブは最初、およそ100語からなる文章をしたためましたが、これは長すぎると判断しました。そこでさらに推敲(すいこう)を重ね、それを7つの項目にまとめたのです。四つのテストは当初は、七つのテストだったのです。しかし、これでも長いと考えた彼は、それを自問形式の4項目にまとめ上げ、それが今日の四つのテストとなりました。
次にハーブは、できあがった項目を社の4部門の部長にはかりました。その4人はローマカトリック信者、クリスチャンサイエンティスト、正統派ユダヤ教徒、長老派教会員という人たちでした。四つのテストが自分たちの宗教上の教義に反しないばかりでなく、私生活ならびに職業人としての生活の模範的指針になるものであることで、意見の一致を見ました。このようにして、「言行はこれに照らしてから」の四つのテストが誕生したのです。簡潔さの中に深い意味を包含するこのテストは、事の大小にかかわらず、クラブ・アルミニウム社が諸事決定を下す際の基本となったのです。
しかし、テストというものはどんなものであれ、実際に検証される必要があります。実社会でうまくいくだろうか? 事業家がその指針に従って仕事をこなしていけるだろうか?
ある弁護士はハーブにこう言いました。「もし私がこのテストを厳密に実行したら、私は飢え死にするでしょう。ビジネスに関して言えば、四つのテストは絶対に実行不可能です」。 この弁護士の懸念も、わからないではありません。他者の利益を立脚点とした上で、真理を実践し、行動評価を行うよう求める倫理システムは、どんなものであれ、大きな負担を伴います。
そのようなテストは、誠実さと野望のバランスを取るのに腐心している人たちに、苦痛に満ちた葛藤(かっとう)を与えることにもなります。一つの生活様式として、それを現実的に実行できるかどうかをめぐって、世界中で熱い議論が戦われてきました。懐疑深く、消極的な考え方しかできない人たちはさておき、ロータリアンの中にも、四つのテストは極度に単純化された哲学であって、その有用性は疑わしく、相矛盾する趣旨からなっており、目標は非現実的である、と真剣に考えている人たちが常に存在します。
このテストは、自らの動機と目標を思慮深く検討するよう求めるものです。真実、公平さ、思いやりに対する強調は、道徳的要素を多く含有しているため、“倫理的消化不良”を起こしてしまう人たちも確かにいます。しかし、1930年代のクラブ・アルミニウム社においては、あらゆることが、四つのテストに照らして判断されたのです。
まず広告に対してそれは適用されました。「より良い」とか「最上の」とか、あるいは「最高の」や「最高級の」といった表現が広告から削られ、製品に関する事実に基づいた説明文が載せられることになりました。競合他社の欠点を論ずる文面も、広告や企業案内から取り除かれたのです。
(THE ROTARIAN 1999年10月号、ロータリーの友2003年10月号再掲載の一部、ロータリージャパン関連資料より抜粋)